「門面を装うことなかれ。」とは、佐藤一斎『言志四録』の言志後録第一一八条に書かれた言葉である。
どのような意味か?簡単に説明すると、「門構えを大げさに飾るな」ということ。
これは商売でも全く同様で「門構え」を飾ることは多々のデメリットがある。
門構えとは、門や玄関、看板など。現代であれば、ウェブサイトなども当てはまるだろう。
門構えを大げさに飾るデメリットとは何かというと、いざ、お客さんが来店した時に「失望」に変わる可能性があるからである。
例えば、ウェブサイトには立派な文言が書いてある。「誰でも」「簡単に」「今すぐ実現できる」などの文言があったり、「いかにも」実現、達成したかのような写真があるなど。これは投資系、ダイエット、美容系、英会話など、様々な商品やサービスに当てはまるだろう。
すると、お客さんは過大な「期待」をして申し込むわけだが、物事はそのように甘くはできておらず、だいたいが失望する結果に終わる。期待値と結果のギャップがあればあるほど、それが怒りや恨みの反動として返ってきてしまう。
だから、長く商売で成果を出していきたいなら、門構えを華美にし、期待値を高めすぎることはお薦めしない。
私ごとで恐縮だが、昨日、私は経営顧問先のクライアントさんに日頃のお礼ということで、有難いことにある和食料理をごちそうになった。その和食店は六本木の華やかな繁華街であるにも関わらず、外見が古い「古民家」で、一見すると「大丈夫か?」と不安になってしまう建物であった。
しかしながら、入ってみると、古民家を改装した風情あるお店で、料理も美味しかった。入り口には盆栽が飾られていたり、部屋には昭和初期の古い書物が置かれていたり、味わい深かった。お皿などの器も古風でそれぞれユニークな作りをしており、情緒が感じられた。また行きたいと思ったし、友人やお客さんにも紹介したいと思った。
もし、このお店の外見が過度に「飾られた」ものであった場合、きっとこの感動は生まれなかったであろう。
ということで、顧客関係をしっかり築き、長く商売をやっていきたいなら、「大げさに飾った門構え」は避けたほうがいいだろう。独立起業初期や儲かってない時など、特にお客さんが欲しくて欲しくて仕方ない衝動に駆られる。が、ここをぐっと堪えられる人の方が結果として長く儲け続ける商売ができるものだ。