小さくても大に勝つ方法(五輪書)。

小身なるものは心に大きななる事を残らず知り、大身なるものは心に小さき事を能(よく)知りて、大身も小身も心を直にして、我身のひいきをせざる様にに、心を持事肝要也。

(「宮本武蔵『五輪書』水の巻」より引用)

意訳すると、小さい者は大きい者の考えや戦い方をよく知り、逆に大きい者は小さい者の考えや戦い方をよく知り、思い込みや決めつけなどで戦うことを避けようということ。

武術の世界では、身体が大きい方が有利に思える。しかし、大きい者が必ず勝つとは限らない。小さい者でも勝つことがある。それが武術の世界である。

例をあげれば、大きい者はウェイトやパワーはあるが小回りが利きにくい。小さい者はウェイトやパワーはないが、小回りが利くなど。

 

特に体重差のある格闘技に「大相撲」がある。体重差がはげしくあるにも関わらず、取り組みが成立する面白い世界である。

例えば、私が好きな力士に「平成の牛若丸」と呼ばれた舞の海がいる(1999年引退)。舞の海は身長約170cmで、体重は約100kg。

大相撲の平均体重は約150kgなので、実に体重差50kgが一般的な中で戦っていた。

格闘技を少しでも知ってる人なら、「50kgの差」がどれほど恐ろしいことか?よく理解できるはず。

でも、舞の海は大きい者に臆することなく勝ち、最高で小結まで昇進したのである。

中でも特筆すべき勝負は、「大関小錦」戦であろう。

小錦といえばハワイ出身の外国人力士。身長は187cm。体重は当時最高で285kgもあった!

ちなみに、私が乗っている大型バイク、ハーレーダビッドソンのスポーツスター883の重量が260kg。それよりも重い。

舞の海の100kgと比べたら、約2倍もの185kg差である。こんな巨漢が間近に全力でぶつかってきたらたまったものではない。

ところが、舞の海はそんな大きな熊のような小錦にもよく勝っていたのである。

動画はこちら。観ていて感動する。

小さい者でも、うまく足ち回れば勝てる。なんとも勇気の出る勝負である。

 

これは何も格闘技に限らず、ビジネスでも同様のことがいえる。

小さくても、大きいものをよく研究し、工夫することで勝てることがある。

例えば、守秘義務があるので業界は伏せるが、弊社のクライアントがある仲介業界でうまくいっている。(名前はAさんとします)

Aさんは資金もほぼゼロからのスタート。業界経験も既存大手業者よりもなかった。

ではどうしたか?

大手業者が「相手にしたくない」ミニマムな案件のみに特化して、業績を拡大した。

しかも、大手業者はきめ細かな顧客対応が苦手。その弱点をついて、徹底的に顧客に細やかな対応をした。結果、良い口コミや紹介が起きた。マスコミにも取り上げられるようになった。

これなどは、典型的な「小さい者の強み」を活かして勝負に勝ったケースである。大相撲でいう舞の海のような存在である。

このように、小さくても決して諦めてはいけない。大きい者の考えや戦い方をよく研究し、小さいなりの武器を磨いていけば、勝機はある。逆に、大きい立場の者は、小さき者の考えや戦い方を知り、弱点を突かれないようにする工夫をすることは言うまでもない。強いからといって油断はしてはいけないと宮本武蔵は「五輪書」で戒めている。