名誉や利益を私物化してはいけない。

「名利は、もと悪しき物にあらず。ただ己私のわずらわす所となるべからず。

これを愛好すといえども、また自ずから格好の中を得るところあり。

すなわち天理の当然なり。」

これは佐藤一斎『言志四録』の言志後録第一二二条に書かれた言葉である。

意訳すると以下の通り。

「名誉や利益はもともと悪いものではない。

ただ、これを私物化してはならない。

これを愛し好むといっても、自分に適した中ぐらいを得るのがよい。

これが天の道理である。」

経営者にとっては耳の痛い言葉かもしれない。

名誉や利益を得たいという気持ちは、成長するための原動力になるが、度が過ぎると危険だということ。

例えば、少々儲けたからといって、天狗になってしまい、メディアに頻繁に出たり、成功体験を講演して回ったり、本業とは関係ない自慢話を書いた本を出版するなど。

知人の噂話で、彼の友人が起業して軌道に乗った頃、テレビのバラエティ番組出演の依頼が来た。確か成功実業家の恋人を募集するという企画のようなものだったと記憶している。彼はそれに出演し、反響も上々だったが、その後の業績についてはあまり良い話を聞かない。

経営者の本分は「陰」の役割を担うことである。陰の役割とは、支えることであったり、調整役であったり、いわゆる「縁の下の力持ち」であること。そして、主役はお客さんや商品、従業員であることを忘れてはならない。

これを忘れてしまうと、要らぬところで妬みや恨みを買ってしまいかねないので注意が必要である。