新規事業が失敗する理由は準備不足。

「事を慮る(おもんぱかる)は周詳ならんことを欲し、事を処するは易簡ならんことを欲す。」

これは佐藤一斎『言志四録』の言志録第二十六条に書かれた言葉。

現代語訳にすると以下の通り。

「物事を考える場合は周到で詳細な準備が必要である。そして、実行する際には用意で簡単にできるようにする。」

要するに、何かを成功させるには、周到な準備が必要だという事。それを怠るから失敗するのだと。

さらに、ここは訳す人によって見解が分かれるのだが、私はこう訳した。

計画や準備は「簡単にできるぐらいまで」周到にやれということだと。

他の方は「実行したら一気に簡単にやれ」と訳す人がいらっしゃったが、私はそう受け取らなかった。

経営とは実行。必ず実行部隊が必要である。わかりやすくいえば従業員だ。せっかく経営陣が「ああだこうだ」と計画を立てても、難しすぎて実行できなければ意味がない。

そうではなく、佐藤一斎は「実行する際に簡単にできるようにせよ」と言ってるのだと私はとらえた。

実際、会社経営をしていると、だいたい経営者や社長は「これだ!」「素晴らしい!」といったアイデアがポンポン湧いてくる。が、それを部下や従業員に話しても、そのほとんどが良い反応がない。

だいたい社長になる人はワンマンや自我が強い人が多いので、そういう時は「いいからやれ!」と言ってしまう。

が、結果は惨憺たるもの。先延ばしされたり、実行されなかったり。実行されたとしても、思ったものと違う結果になることが大半だ。

例えば、私事で恐縮だが、昔、あるウェブサイトの買収を行った。しかしながら、たいした準備や情報収集もせずに買ったため、買収後は大変な苦労を強いられた。買収後に隠れた「債務」が見つかったりした。

顧客ニーズに合わず、予定していたより収益も伸びなかった。結果として、そのウェブサイトは「除却」して清算することになった。もう少し周到に競合調査や顧客のニーズ調査、マーケティング計画を立てればよかったと反省している。

ではどうすればよかったのか?

佐藤一斎の言葉によると「念入り」に準備し、かつ、簡単に実行できるぐらいまでにすることである。この言葉は常に戒めとして心に止めておきたい。