先日、若手経営者や起業家向けに勉強会を行った。
以前から道場生には「今までの時代は『破天荒』が経営者のアピールポイントになったが、これからの時代は『謙虚さ』などを表現した王道経営をしていかなければ極度なバッシングを受けるなど、まずいことが起きる。」と伝えていた。
すると、道場生が「実は今、あるネット上の有名人がものすごい勢いでSNSで叩かれています。おっしゃる通りのことが起きました。」とお話された。
私は知らなかったので、少々リサーチしてみたところ、キッカケは些細な事だったが、それに対していわゆるついてきてくれている読者やファンのような方々に対し、見下したような発言をしてしまったことが炎上につながったようだ。
さらに、仲裁に入った年長者のような方にも逆なでするような発言をしてしまったことで四面楚歌状態になってしまった。
これなどを見ると、佐藤一斎『言志四録』の言志耋録第二五二条を思い出す。
「人君たる者は、宜しく下情に通ずべきは、もとよりなり。
人臣たる者も、また宜しく上情に通ずべし。
しからざれば諫諍(かんそう)もてきならず。」
訳文は以下の通り。
「君主たる者は、下々の事情に通じなければならないことは言うまでもない。
また、人の臣たる者も上の事情に通じなければならない。
そうでなければ、いくら人君を諫めても的外れになってしまう。」
(訳文は講談社学術文庫の川上正光氏のものを引用しています)
シンプルにとらえるなら、ついてきてくてれている下の人たちの気持ちにも通じなければいけないし、上司のような立場が上の人たちの気持ちにも通じなければいけないよということである。
何が上で下かというのは議論の余地があるが(人に上も下もない)、いわゆるついてきてくれるファンや読者を見下す発言はよろしくない。さらに、年長者に対して反論したりするのもよろしくない。
確かに内容を確認してみたところ、さほどおかしなところは見当たらなかった。
では、何が原因か?というと、要するに「感情のもつれ」のようなものである。こういう時は「冷静」に対応しても、相手は余計に腹が立つだけだ。正論は通じないと考えたほうがいい。
どうすればいいかというと、やはり、佐藤一斎先生のおっしゃる通り、相手の立場になってよくよく考えてみることである。
これからの世の中は、ますます出る杭のような存在は否が応でも目に付くだろう。となると、人間心理についてさらに探求し、実社会に応用できるかどうかが経営者やリーダーなど上に立つ者には重要になってくる。
今回のオススメ参考図書
『[現代語抄訳]言志四録(佐藤一斎著、岬龍一郎訳、PHP)』