「弊を矯る(たむる)の説は、必ずまた弊を生ず。」
これは佐藤一斎『言志四録』の言志後録第119条に書かれた言葉である。
意訳すると、物事の「弊害」を矯正しようとして、かえってまた別の「弊害」が生じてしまうことを戒めている。そうならないためには根本解決を図ることである。
例えば、商売をしていて「売上が下がった」からといって、安易に「値下げキャンペーン」を行い、かえって経営を苦しめてしまうなど。
そもそも売上が下がった原因は何だろうか?品質が落ちたことかもしれないし、需要が減ったことかもしれない。または競合が増えたことかもしれない。
それらの原因を分析せず、根本を理解せず、安易に「値下げ」によって弊害を矯正しようとしてしまえば、また別の問題が発生してしまうだろう。例えば、必要な利益を確保できないために、品質改善できなかったり、従業員に十分な給料を払えなくなり、かえって商売が立ちいかなくなるなど。
昔、ある友人に「事業が立ちいかなくなったので融資してほしい」と相談を受けた。が、よくよく事業の内容を聞いてみると、資金繰りというよりビジネスモデルに問題があることがわかった。続ければ続けるほど、儲けようともがけばもがくほど、キャッシュアウトも増え、資金繰りが次から次へと必要になるのだ。
だから、私はそのことを指摘し、「続ければ続けるほど危険は膨らむのでビジネスモデルを見直し、キャッシュフローの改善することが先ではないか?」と伝えた。その後、彼からは連絡が来なくなってしまった。
問題が起きた時は一度立ち止まって考え、根本から解決することが肝要である。