近道は遠回り。

明治維新に貢献した坂本龍馬、西郷隆盛、吉田松陰らに影響を与えた佐藤一斎『言志四録』に興味深い一文がある。

「遠方に歩を試みる者、おうおう正路をすてて捷径(しょうけい)におもむき、あるいわあやまりて林莽(りんもう)に入る。わらうべきなり。人事多くこれに類す。特にこれを記す。」

現代語訳にしてみるとどういう意味か。

「遠方へ行こうとするとき、ややもすれば正規のルートを外れて、近道を選んだりするが、結局は道に迷って遅れることがある。これは笑える。人生行路でも、これに類することが多いので、特に記しておく。」ということ。

起業や経営でも同じです。近道をしようとするとかえって遠回りになることがある。

例えば、「今すぐ儲かる」「誰でも儲かる」「簡単に儲かる」といった類の書籍やセミナーなどを目にすることがあるが、かえってこれらはお金を手にするのを遠ざけてしまう。

なぜか?

お金持ちになるために必要なスキルや知識の吸収をすっ飛ばしているからだ。

例えば、お金持ちになるためには、会計やファイナンスの知識は必須。お金の流れが読めないで、どうやってお金を儲けることができるのか。ダイエットする時に体重計に乗らないようなものである。

また、ビジネスに取り組むには会社法や商法などの法律の知識も絶対的に必要になる。自分がやってることが法律の範囲内なのかそうでないかを知らずして、どうやってこの法治国家で商売ができるのか。ルールを知らないでゲームをするようなものである。

にも関わらず、これらの知識の習得をすっ飛ばしてお金持ちを目指す人がいかに多いことか。佐藤一斎『言志四録』では、こういった近道思考を特にいけないことだと厳しく戒めている。