尺蠖(せきかく)の屈するは、以って信(の)びんことを求むるなり。

尺蠖(せきかく)の屈するは、以って信(の)びんことを求むるなり。

これは「易経」に書かれている言葉である。

意訳すると「尺取虫が体を屈折するのは、伸びるためである」ということ。

尺取虫が身を縮めるのは一見すると苦しそうに見える。

が、それは、伸びて前進するための前段階である。

これは経営や人生でも同じ。

逆境やピンチなどは、伸びて前進するための前段階である。

例えば、今でこそ多くの人が手にしているスマートフォン。特に人気があるのがアップ社のiPhone。携帯電話にイノベーションを起こしたことで有名なのは故スティーブ・ジョブズである。

今でこそカリスマ的偉業を果たしたとされるスティーブ・ジョブズだが、実は「自分で起こした会社を追い出される」という危機があった。

しかし、アップル社を追い出されたジョブズは、めげることなく次のチャンスに目を向けた。具体的にはピクサー社のCEOに就くなど別活動で経験を積んだ。ちなみにピクサー社では映画『トイ・ストーリー』などの名作を生んだ。

これら別会社で培った経験を元にアップル社CEOに再び返り咲いた。そして、これらの経験が功を奏し、iPodやiPhoneなどの名作が生まれたのだ。

つまり、アップル社を追い出されるという「ピンチ」がなければ、その後の「チャンス」にはつながらなかったということである。

だから、何らかピンチや苦しいことがあっても、それは「伸びる前の屈折運動だ」と考えよう。

また、考え方によっては、屈折=ピンチがなければ人や会社も成長しないとも考えられる。

この言葉を思い出すと、逆境があっても前向きに捉えられるだろう。

執筆者

東洋思想を学ぶ経営塾「創伝塾」主宰。東洋思想コンサルタント™。公益社団法人日本心理学会「認定心理士」。㈱創伝社、代表取締役。1978年生まれ。愛知県名古屋市出身。

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