「およそ学を為すの初は、必ず大人(たいじん)たらんと欲するの志を立て、しかる後に、書は読むべきなり、しからずして、いたずらに聞見を貪るのみならば、則ち或いは恐る、傲りを長じ非を飾らんことを。
いわゆる『寇(こう)に兵を仮し、盗に糧を資するなり。』うれうべし。」
これは佐藤一斎『言志四録』の言志耋録第一四条に書かれた言葉である。
意訳すると、学ぶ際には立派な人間になるという志がないとマズイ。ただやみくもに学習するのは傲慢になったり、悪いことを隠すような人間になる恐れがある。これは例えるなら、盗人や外敵に武器や食料を与えるようなものであるといこと。
これを経営に当てはめてみると、経営する際に立派な経営者になろうという志がないとマズイということ。
ただやみくもに金儲けだけを目的に経営をすると、お金持ちになった時に傲慢になってしまったり、儲けが出てない時には隠ぺいしようとしたりする恐れがある。
現代は情報化社会でMBAなどの高度な経営ノウハウが誰でも手に入る。ただ単に経営ノウハウだけをつまみ食いし、お金儲けだけを目的にすると、確かに一時的には儲かるかもしれない。
が、志がないと人間的成長がついてこないため、痛い目を見てしまう。例えば、粉飾、脱税、スキャンダル、詐欺など。最悪のケースでは投獄されてしまうことも。
もちろん、経営者たるものお金儲けは大事だ。言うまでもない。しかし、それだけでなく、佐藤一斎の言うように、世の中を良くしていく等、立派な経営者になるという志も持っておくと、途中で道をそらさずに済む。